本小松石製の金胎寺形宝篋印塔を総手加工で製作。月刊『石材』さんに取材いただきました

東京都一円にて、お墓づくりをはじめ、お墓の様々なご要望にご対応しております、一銀(かずぎん)石材の稲田圭二郎と申します。このたび、本小松石製の金胎寺(こんたいじ)形宝篋印塔をすべて手加工で製作いたしました。

 

宝篋印塔 高さ180cm/本小松石/金胎寺形/ノミ切り 『月刊石材』掲載

 

以前に本小松石のノミ切りの五輪塔を製作したことをきっかけに、今回は宝篋印塔(ほうきょういんとう)を製作することにしました。特別にご注文をいただいたものではなく、手仕事を極める修行も兼ねたほとんど自分の趣味のような形ではありますが、お求めがあればどちらかに送り出すこともあるかもしれないとも思いながら製作することにしました。選んだのは、京都にあるお寺、金胎寺(こんたいじ)形の宝篋印塔です。五輪塔と並んでいたらカッコいいだろうなと、石選びから吟味して取り掛かりました。

 

五輪塔の各部の名称

こちらは「返花座(かえりばなざ)」と呼ばれる、一番下の土台の部分です。今回は、置き場の事情もあって、下から順に製作していくことにしました。四角い台座の上の部分が花の形になっています。まずは高さを決めて、お墓の台座によく見られる亀腹加工(亀のおなかのようななめらかな曲線の加工)のようなアールを四辺に作ります。そこから一枚ずつの花びらに振り分ける形で絵を描いて、その線に合わせて花を作っていきます。ノミや、細かいところは専用の道具も使って、叩いて仕上げていきます。中央の穴はホゾになる部分です。

 

こちらは、「返花座」の上の「基礎」部分です。おおよそ完成していますが、これから天面にホゾ穴を開けます。奥に見えているのが、以前製作した五輪塔です。

 

ホゾ穴を開け、この上に設置する「塔身」の底部にヘソがついていて、この「基礎」のホゾと接合します。結合部分はこのような構造にすることで、地震などの揺れで倒れることを防ぎます。

 

「返花座」の上に、「基礎」を据えました。もちろん接合部分も手作業でノミで仕上げていますので、高い部分があればうまくかみ合わない時もあり、座りが悪いと微調整することもありますが、今回は一発でおさまりました!

このあと、この上に据える「塔身」部分を作成しました。

 

こちらは笠部分です。笠の部分はこのような段々の形状になっています。この天面に、一番上の「相輪」を据えるための大入れのホゾ穴を開けます。

 

笠を「塔身」の上に据えました。いよいよ完成が近付いてきました。

 

一番上の「相輪」まで製作し、据えて調整をして完成です!

総手加工の金胎寺形宝篋印塔です。「めちゃくちゃカッコいい!!」と我ながら感動の出来でした^^ 完成後はSNS等に投稿して、出来栄えを皆さんに見てもらいました。

 

投稿してから後日、ありがたいことに日本石材工業新聞社さんから取材いただきました。その後、月刊『石材』さんというお墓業界の出版社から問い合わせがあり、関東近辺の手加工の作品を取材したいとのことで、プロのカメラマンさんに撮影してもらいました!

 

こちらは以前に製作していた五輪塔です。古代型と呼ばれるものですが、自分で色々と見て研究して図面から作成しました。五輪塔は5種の部分からなっており、上から空輪、風輪、火輪、水輪、地輪と称します。私が刺激を受けた中世(特に関西)の五輪塔は、この空輪・風輪が大きいのが特徴で、それを参考にしています。こちらも一緒に取材していただきました。

 

並ぶとやはりカッコいいですね! ^^

今回の宝篋印塔は、一から仕上がりまで、すべてノミやセットウなどを使った完全手加工で、ご依頼いただいている仕事の合間をぬって、8か月の時間をかけて完成しました。ここまでの作品は、一生のうちに何度も作れるものではないと思います。現代のような電動の道具や加工技術もない昔の職人さんは皆が同じ方法で作っていたことを思うと、挑戦するような気持ちで楽しみながら製作することができました。

 

取材をしていただいてから、ご縁あって、神奈川にある石屋さんから店舗にぜひ飾りたいとご相談をいただき、数週間後には送り出すことになりました。今度お祭りがあるそうで、そのときに皆さんに見てもらいたいともおっしゃっていました。

実は、「手作り」とひとくちに言っても、今回のような完全な手作りもあれば、現代の電動の道具も使った方法もあります。もちろん昔の人はひとつずつコツコツ手作りしていましたが、現代ではそうした道具の使用を含め、費用や制作時間なども考慮した上で、「どこまでを手作りとするか」という観点も必要になります。細かい点は、その都度ご依頼者様と話し合いながら柔軟に対応させていただいております。

完成した五輪塔と宝篋印塔は、工房の一角にありました。毎日、工房のドアを開けると目に入る場所で、並んでいるのを見るのがとてもうれしかったので、あと数日でなくなってしまうと思うと少し寂しいですが、送り出された先で、もっとたくさんの方に見ていただけると嬉しいです。