江持石の香炉・花立の手加工での製作のようす。港区寺院墓地

東京都一円にて、お墓づくりをはじめ、お墓の様々なご要望にご対応しております、一銀(かずぎん)石材の稲田圭二郎と申します。港区のお寺様にて、江持石の香炉・花立を手加工で製作しご納品させていただきました。その製作の様子をご紹介いたします!

 

港区寺院 香炉と花立(江持石)

お寺様からのご依頼で、納骨堂の香炉と花立を手加工で製作させていただきました。今まではご縁がなかったお寺様ですが、これまでにお世話になったお寺のご住職様からご紹介いただきました。ありがとうございます。詳しくご希望を伺って設計し、早速製作に取り掛かりました。

 

今回の花立と香炉は、上下二段の構造になります。高さが欲しいというご要望だったので、二段にすることをご提案して採用いただきました。こちらは下の段です。

使用したのは江持石です。福島県で採れる安山岩系の石で、昔のお墓には色々なところに使われていました。時間が経つと味が出てくる石で、この花立と香炉の奥にある「つくばい」が江持石だったので、時間が経つにつれて同じ風合いになってきます。

 

側面は、「ビシャンナマコ仕上げ」という仕上げです。「ビシャン」はビシャンという道具で石の表面に細かい凹凸を作る仕上げです。その面がこのように盛り上がっているのが「ビシャンナマコ仕上げ」になります。この台座の天面中央に、香炉を作成して設置します。

 

台の天面の手前と横は、「小たたき仕上げ」です。細かい線に見えると思いますが、これはすべて専用の道具でひとつひとつ叩いています。これをすることで石が締まって硬くなり、石の地の色が見えて黒い細かい点が浮き出してきます。

 

台座の上に設置する香炉を作成しています。石に型を使って印をつけて、このように削り出します。香炉部分は1寸3分(約4cm)ほどの厚みです。

 

だいぶ加工が進みました。真ん中部分は手前にふくらみを持たせて、下は拝みという飾りを作りました。こちらもすべて小たたき仕上げです。

 

屋根の部分に段を付けていきます。段は1分(約3mm)くらいです。手作業でひとつひとつ叩いて少しずつ仕上げていきます。

 

さらに加工が進みました。天面に花立の穴を開けました。今回は花立の間にちょっとしたお供物を置けるようにしたいとご希望をいただいていましたので、このような設計にしました。香炉の周りはビシャンナマコ仕上げで、下の台座をあわせています。

 

加工を進めていきます。中央に、ノミを使って香皿を置く穴をあけていきます。

 

笠の下の細かい部分は、「突きノミ」で突いて仕上げました。ここは奥に向かって少しアールがついています。様々な技法や道具を駆使して仕上げていきます。

 

加工が終わり、台座の上に香炉を設置しました。香皿を置く穴は宝珠の形を模しています。仮設置をして確認し、現地で設置工事にはいります。

 

完成です! 同じ江持石のつくばいの手前に設置しました。いまは新しい花立と香炉の色と全く違いますが、いずれ経年で違和感がなくなり、さらに味わいが出てくると思います^^

 

お寺様には、事前に手書きの正面図等を見ていただいていたので、私が思っている良さが十分に伝わっているかどうかと思っていたのですが、完成したものをご覧になると想像以上の仕上がりだったようで、とても喜んでいただけました。このたびは、とてもありがたい貴重な機会をいただきありがとうございました。

今回は、お寺様にて江持石の香炉と花立を手加工で製作させていただいた様子をご紹介いたしました。手加工での製作は、ひとつひとつ丁寧に進めるため本当に時間のかかる作業ですが、作っているとき自分自身も「早く完成が見たい!」とワクワクしながら作っています^^ この先も100年、200年と長く残る作品を製作させていただけることに感謝して、これからもひとつひとつ取り組んで参りたいと思います。